デッドエンドの思い出 … よしもとばなな著■ (文藝春秋)
「幽霊の家」「おかあさーん!」「あったかくなんかない」
「ともちゃんの幸せ」、表題作の5つの短編集。
物語はどれもせつなく、登場人物は温かく思いやりがある人たちばかり。
落ち込んでいる時に、こんな考え方もあるんじゃない?という言い方が、
心を開かせてくれ、立ち直るきっかけを作ってくれます。
自分もこんな人になれたらいいな、
こういう心の助けができたらいいなと思いました。


ばななさんのように心の内をうまく表現できるってステキだなぁ…。


クリスマス・ボックス … リチャード・P・エヴァンズ著■ (講談社)
アメリカのソルトレイク・シティにある大邸宅に住んでいる未亡人が
住み込みで働いてくれる家族の求人を新聞広告欄に出し、
ある若夫婦が選ばれ住むことになる。
若夫婦の引越しが住み、その家族と親類が屋根裏部屋を片付けたところ、
使われていない揺りかごとクリスマスボックスを見つける。
若夫婦たちに未亡人が語るクリスマスの話とは何を意味するものか、
また、何を伝えたいのか…。
次第に自分たちは、家事をするためだけに雇われたのではないと気付いていく。


一見、ミステリアスな話ですが、実はとっても心が温かくなる話で、
今、いちばん大事なことは何なのかということを気付かせてくれます。
ここに出てくる話と中身は違えど、自分は何とももったいなく、
貴重な時間を無駄にしているのか、と思ってしまいました。


この話はアメリカのベストセラーに入ったということですが、
いかにもクリスマスを楽しむアメリカ人が好みそうな話だなとも思います。
子供を持っている人には伝わりやすい話だけど、
私にはそれほどピンと来るものがなかったな、という印象を持ちました。


DIVE!! 1〜4 … 森絵都著■ (講談社)
ダイブ(飛び込み)に青春を賭けるスポ根小説です。
何の知識も持っていなくてこの小説が楽しめるのか、
4巻の長い道のりに、途中で挫折してしまうのではないかととても心配でした。
しかし、登場しているダイブ仲間の意気込みや目標(オリンピック)にどのように
立ち向かっていくのだろうと思うと、
最後まで見守りたくて、目が離せなくなってしまいました。
わずか1.4秒の演技に、どれだけの精神力や練習量がいるか、
また、自分のこと以外のあらゆる興味を犠牲にし、
演技に虜にさせられる選手たちが、あまりにも熱く魅了させられました。
誰もが自分自身の闘いの中で限界にぶち当り、
仲間に励まされ、また励ましていく姿がとてもすがすがしかったです。
そして最後まで絶えず相手の立場に立って考え、
自分が勝っても負けても一緒に喜び合う姿は貴重で感動します。
読めば読むほど、先が気になる作品でした。


使いみちのない風景 … 村上春樹 = 文/ 稲越功一 = 写真■ (朝日出版社)
久しぶりに写真付きエッセイを読みました。
最初に最後のことをお許しください。
最後の春樹さんの考える、人生においてすばらしいものですが、
こんな簡潔に心に残る言葉を言える人ってなかなかいないです!
ネタバレするので言えないのがとっても残念なんですが、ぜひ読んでみてください。


タイトル通り使いみちのない風景に春樹さんの
堅苦しくないエッセイを入れ込んでいるような感じの話です。
好きでもない旅行を続けるわけは、自分の居場所(定位置)を探し求めるため、
という春樹さんですが、生活するにあたってこれは重要なポイントの1つですよね。
旅行をしていて、何て長閑できれいなところだろう、
こんなところに住みたいな、と一瞬思う事がありますが、
旅行者だからそう思うわけで、いざ住んでみると不便だったということにもなりかねない、
という話を経験を踏まえ面白く書かれています。
通りすぎる風景を写真に撮っても、その時の感情はなかなか思い出せないし、
人にも伝えられないという「使いみちのない風景」。
しかし、稲越さんの写真がとてもきれいで、
文と併せて少しでも知ってみたいという気持ちを掻き立てられます。


コンビニ・ララバイ … 池永陽著■ (集英社)
人が好いオーナー幹郎としっかり者の従業員治子がいる、
人情味溢れるコンビニエンスストア「ミユキマート」。
来店するお客さんにはそれぞれの人生があり、また悩みを抱えている。
幹郎は、いつもその相談役になっている―。


コンビニやって来る人たちの物語を描いている7編の短編集です。
人に話せない思いや、話ができてもそれ全部を受け入れ
心の内を吐露させてくれる人はあまりいないですよね。
同じく、自分には辛い体験があるから人の気持ちが理解できるという人も。
そこのところを全部クリアしているのが、オーナーの幹郎なのです。
人を否定しないで肯定しながら意見をしてくれるので
読んでいるうちに、私まで心が軽くなっていくんです。
胸がポッと熱くなるような、
身体に温かい何かが注ぎ込まれるような感覚の物語でした。
これまで池永さんの名前すら知らなかったのですが、
この語り口が気に入り『走るジイサン』も買ってしまいました。


ハリガネムシ … 吉村萬壱著■ (文藝春秋)
第129回芥川賞受賞作です。
1回きりしか会ったことが無いソープ嬢サチコが
ある日突然高校教師慎一のもとに連絡を入れてくる。
サチコは結婚しているが旦那と子供と離れ離れに生活しており、
彼女の生活はかなり落ちぶれていた。
そのサチコから、慎一は未知の世界へと足を踏み入れることになる。


読むまでは夢のある話を想像していたのですが、
読んでみたら、エキゾチックでビックリ!
ハードボイルドでエロチシズムだし、内容がこれまた過激です。
ソープ譲のサチコは、脳天気なところや言葉が可愛いキャラで私は好き。
しかし、救いようがなく常に心配になる存在で、先行きが不安になります。


話の内容には終始圧倒されっぱなしで、気付いたら腰が抜けてました。
面白いことは面白いんですけど、ちょっと引いてしまう話でした。


つきのふね … 森絵都著■ (講談社)
『梨利』と『さくら』は中学生で昔からの友だち。
そして『勝田くん』は梨利の後をつきまとう存在。
でもいつも3人は仲良し…のはずだったのだけれど、
ある事をきっかけに、梨利とさくらの仲が危うくなり2人とも口を利かなくなる。
さくらは梨利を気にかけながらも日々退屈さを紛らわせるため、
ひょんなことで知り合った『智さん』のアパートに通う。
つきまとうのが好きな勝田くんはさくらを尾行して智さんの存在も知ってしまう。
後にさくら、勝田くん、智さんの3人の仲良し関係になるが、
毎日とり憑かれたように宇宙船を描いていた智さんの心は除々に壊れ始めていく。
智さんを助けるために心配する、さくらと勝田くん ―  。


ファンタジックなタイトルが優しく、読む前から心を和ませてくれます。
森さんはいつも揺れる成長期の心をリアルに分かりやすく書かれていて、
吸収しやすく、そのまま受け入れやすい書き方が好きです。
「つきのふね」は最後にいけばいくほど話は盛り上がり、
ハラハラドキドキさせられ一見、ミステリかなと思えるほど。
最初、勝田くんは危ない男の子という印象があったのですが、
おせっかいながらも優しい心の持ち主で好感度抜群です。
ラストは森さんふうに、きゅっとまとめるところがすばらしく、とても綺麗でした。
人は人によって助けられ、友情は裏切らないことを教えてくれる1冊です。


放課後 … 東野圭吾著■ (講談社)
東野さんのデビュー作であり、第31回江戸川乱歩賞受賞作品です。
ミステリの中でも私が苦手とするトリックものでした…。
校内の更衣室で、生徒指導の男性教師が毒物を飲み死んでいるのが発見された。
その教師は、一言で言うと“嫌味なタイプ”で、まさか自殺しそうにもない人。
だが死んでいたのは密室 ―  そのことから自殺と他殺の両面の線が浮かびあがる。
そして変死事件の記憶が消えていない体育祭時、事件は再び起きる…。


背景は女子高なんですが、私の高校時代(といっても女子高じゃないです)の
先生と生徒の会話は、尊敬ありの馴れ合いという感じ。
この放課後に書かれているのは、まさしくそんな会話なんです。
東野さんはどうやってこの会話を手に入れられたのか全くもって不思議!
さて、ここに使われていたトリックですが、これもお見事です。
考えてみれば、なんだ…と思うことなのですが、ひっかかりましたね。
明らかに盲点を突いた話でした(トリックとはそういうもの??)。
事件が解明され、これでラストを迎えるのかと思うのですが、あったんですね別の話が―。
それは何かと言っちゃうとネタバレなので言いませんが、
男とはそういうものかもしれません― これだけ言っておきます。(謎)


神のふたつの貌 … 貫井徳郎著■ (文藝春秋)
教会に生まれ育った早乙女輝だが、小さい頃から常に疑問に思う神や救い。
やがて教会を引継ぎ人の親になるのだが、
牧師になっても迷いは消えず、
神の悟りがあらぬ方向へと迷い込んでしまう…。


宗教が背景になっているこの話は重く厚く、何が罪で何が罰なのかというところが、
三浦綾子さんの「氷点」と似ていると思いました。
私自身、このテーマに感心が無いので知識も持っておらず、
おおかた読み流す状態。
宗教の話が90%、ミステリーが10%ぐらいの書きで、
この手の話が好きな人であれば面白いんだろうけど、
私にはちょっと辛かったように思います。


いつか記憶からこぼれおちるとしても … 江國香織著■ (朝日新聞社)
タイトルが綺麗でステキだなと思って読んでみました。
いまどきの女子高生が主人公となり繰り広げられる6篇の短編集です。
個人個人違う悩みを持ち、人と比べながら高校生活を送り、
堂々としている姿がとても初々しい話。
自分の送った高校生活とオーバーラップして、後悔するやら笑ってしまうやら。
6篇の中にはせつない話もあるけれど、1篇1篇の最後の余韻がとても良く、
このタイトル通りのものが得られます。
読んだ後ほのぼのとする話ばかりなので、
疲れた時にさらっと読みたい本に推薦します。


リズム … 森絵都著■ (講談社)
講談社第31回児童文学新人賞受賞作。
親戚の真ちゃんは年上でさゆきと大の仲良し。小さい頃から一緒に遊んだ仲だった。
年月は経て、さゆきは中学生に、
そして真ちゃんはガソリンスタンドのアルバイト店員になった。
真ちゃんは大好きなロックバンドをやり、東京で夢を叶えたいと思っているが、
さゆきは昔のままの真ちゃんがいいと思う。
次第に周りの人や環境が変わり翻弄されそうになるが、
真ちゃんに、
「自分がメチャメチャになりそうなとき、心の中でリズムをとるんだ。(本文抜粋)」
と言葉をもらう ―。


カラフル」同様、テンポがよくユーモアがあり面白かったです。
子供の健気さや大人への成長がとても自然に書かれてあるので、
作られた、という感じは全然受けませんでした。
自分は変わっていくのに、周りはいつまでも変わって欲しくないという
感覚は私の我侭かと思っていたけれど、誰でも考えることだと言われると、
心の支えがとれて気持ちが楽になりました。
この本のキャラですが気に入っているのは、お説教好きの三木先生。
生徒を一人一人ちゃんと見つめいつも生徒と同一視線で見守り、
どことなくボケありの性格がとてもイイ味を出しています。
この「リズム」の後に続く「ゴールド・フィッシュ」も絶対に読みたいです。


ベルナのしっぽ … 郡司ななえ著■ (角川文庫)
27歳で視力を失った郡司さんが、
盲導犬「ベルナ」との出会いから別れまでを書いた、ノンフィクションの物語です。
ベルナには、パートナーを守る重要な役目があります。
自分の身体を傷つけられても我慢をし、守ります―。
人間と同じで意志を持ちプライドもあります。
例えば、何回も試されていると思えば機嫌が悪くなり、命令にも反応しなくなります。
しっかり面ばかり犬かと思えば、やきもちやイタズラをしたりと、
普通の犬と変わらないところもあります。
そのベルナが老年を迎え体力を無くしても、
パートナーのことを思い、見つめている姿は胸が熱くなり、
最後の場面では、感動、感動で涙が止りませんでした。


カラフル … 森絵都著■ (理論社)
大きなあやまちを犯して死んでしまった魂があの世に行く。
その魂は輪廻のサイクルからも外されてしまい、
もう二度と生まれかわることができない。
しかし、抽選に当りその魂は再挑戦を許される。
再挑戦の中で、魂が前世で犯したあやまちの大きさを自覚することができたら、
無事昇天し、輪廻のサイクルに戻されることになる ― めでたし、めでたし。
その話を聞いた魂はガイド天使のプラプラと一緒に下界に降り立つ。
そして魂は「小林真」
という知らない人の身体に入っていった。


初めて読んだ森絵都さんの本でした。
とても分かりやすくリズム感がある物語で、
押しつけがましい書き方になっていないのが気に入りました。
さりげなく書いてさりげなく気付かせてくれ、
心に温かいものを注いでくれる感じがします。
自分が自分故に巧く操れない不自由さ、
他人の身だから客観的に見れ思いきった行動が取れる ―。
今まで生活をおくっている中、簡単だけどなかなか気付く事ができず、
私自信もっと早くこの本と出会っていれば、物の見方も変わったかも ― なんて。
手許に置いて、繰り返し読みたい本です。


泳ぐのに、安全でも適切でもありません … 江國香織著■ (ホーム社)
『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』とは、
江國さんがアメリカを旅行していて見かけた看板からつけたタイトルだそうです。
一風変わったタイトルでどんな話なのか惹きつけられました。
10篇の短編恋愛小説で、恋愛に喜びそして苦しみいたわる、
切ないけれども、応援したくなる小説です。
不倫がテーマになっている短編がいくつか見られるけれども、
嫌味が無く、いつも言う様ですけど出てくる女の子が可愛いんですよね。
このタイトルの『安全でも適切でもありません』ですが ― じゃぁどうすればいいの?
と思いますが、自己判断にお任せします、ってことでしょうね。
責任の全てはあなた(当事者)に存在します ― と。
だからここに出てくる女性達は責任の上に居て、活き活きしているんだろうな。
江國さんが書く主人公って、女性見るとすごく女性的でいつもステキです。


姫椿 … 浅田次郎著■ (文秋文庫)
『鉄道員』から浅田さんの本を読んでいなかったのですが、
文庫化出版されたことをきっかけにまた読んでみました。
この本はタイトル作を含む8編が収録されている短編集で、
どの作品を読んでも、日常と非日常がうまく相俟って、
暫らく夢を見せられている感じになりました。
この世に本当にいるような、生きているような仮想動物の「シエ」、
1人しかいないはずなのに、他の場所でもう1人別の自分が生活をしている「再会」など、
怖いようなんだけど、どこかで誰かが見守ってくれているような、
どこかしら温か味が感じられる作品で、8編で終るのがとても残念でした。
これを読んで、もっと浅田さんを知りたくなってしまいました。


追憶列車 … 多島斗志之著■ (角川文庫)
タイトルがステキで読みたくなった本で、表題作を含め5編からなる短編小説です。
多島さんと言えば『症例A』が「このミス」にも選ばれ人気を博したらしいのですが、
私はこの本を読むまで名前すら知らなかった人でした(ごめんなさい)。
今回の5編の作品は、どれもミステリーかな…う〜ん、ミステリーでしょう。
人間ドラマ的なものが強く、人と人との繋がりの「愛」がテーマになっています。
一言に「愛」と言っても種類は様々ですが、
親から子供に対する愛、友情の愛、男女の愛というふうに、
それぞれの分野で楽しめます。
私の好みから言えば、タイトル作よりも時代ものの『お蝶ごろし』が
難解の割には時代背景が見えて面白かったかな、と思います。


青空のむこう … アレックス・シアラー著■ (求竜堂)
不慮の事故に遭い突然「あの世」に行ってしまった少年ハリー。
あの世に言って一番の心残りだったのが、
事故に遭う前、喧嘩をして姉のエギーに言ったひどい言葉、
「僕が死んだら、きっと後悔するんだから」。
その言葉がずっと少年の心にひっかかっていた。
そして「あの世」で知り合った死者の先駆者少年アーサーがハリーに
下界(この世)へ降りようと誘う。
色んな事を楽しみにして行ったハリーだったが、死亡してから時間が経ち、
懐かしい昔の環境にも少しずつ変わりを見せ始めていた。
果たして彼はエギーの元に行けるか、
そして言葉を残すことができるのか、そしてまたその後は…。


少年と言えど実にしっかりしていて、それだけにとても切ないお話です。
あまりの物わかりの良さには、行きすぎかと思われる部分もあるのですが、
家族の未来に希望をかけるハリーには胸が痛みました。
この本は1人でじっくりと味わって読みたいですね。


しょっぱいドライブ … 大道珠貴著■ (文芸春秋)
第128回芥川賞受賞作(表題作)と他3編の短編小説です。
34歳独身のデパート勤務「わたし」と60代で既に妻子を持っている
「九十九さん」との恋愛小説です(しょっぱいドライブ)。
第一印象として高齢者にも優しい手を差し伸べるような小説だと思いました。
主人公の「わたし」ですが、誰にでも優しい雰囲気で、
良く言えば温和な印象を受けるけれど、悪く言えば優柔不断。
弱い者同士がくっついてしまうんだと簡単に思えてしまうのが寂しい。
そして3編ともに、エロさをどうにか違う書き方にできなかったのかな。
文学小説は、いまいち理解できない私でもありますが…。


温かなお皿 … 江國香織著■ (理論社)
12編からなる短編小説で、食べ物がテーマとなっています。
ひとつの話に手作りの料理をネタに組み合わせたり、食材の話を入れたり、
どれを読んでも、まるで目の前にあるように味や香りが伝わってきます。
例え「ねぎ」に関する話が出てきても、
お味噌汁にどっさり入れるとか、冷奴にもどっさりかけるなんて言われると、
実に美味しそうで、今すぐにでも食べたくなっちゃうんです。
寂しさの話の中にも温かい食事のを出して話をまろやかにさせるのは
江國さんの独特の書き方でもあるんでしょうね。


ハゴロモ … よしもとばなな著■ (新潮社)
自分(ばななさん)がまいっていた時期に書きはじめた、
とあったのですが何かあったのでしょうか。
全く知らずに読み始めたのですが、今までとは何だか違う小説だなぁ…と思いました。
 不倫関係にあった彼氏と失恋し、痛みを癒す為に
昔住んでいた静かな故郷へと戻る。
喫茶店を営んでいる「おばあちゃん」、父親をきっかけに知り合った「るみちゃん」、
そして何故か懐かしい「みつるくん」やその周りの人達。
その人々と温かい繋がりができあがっていき、
静かにそして少しずつ「ほたる」(主人公)も癒されて
本当に大事なものを見つけだしていく・・・。


ばななさん曰く、「青春小説どまんなか!」の作品で、
青春時代を通り過ぎた私には、懐かしさがありました。
主人公ほたるは、離れていった彼氏を追い求めない女性、
前向きで素直、そして心優しく振舞うのが時には痛々しく見えるのですが、
踏ん切り(何だかちょっと違う?)をつけ回復する(元気になる)まで私は応援するよ、
と誰もが後押ししたくなるような、とてもかわいい女性です。
読んでいると、力が湧いてきて自分も素直になれるような気がして来ます。


キッドナップ・ツアー … 角田光代著■ (理論社)
この本は児童文学で、
大人になって「児童文学」というと、今さらとか物足りなさを感じたりします。
ですが、その中には過去に忘れられてしまった記憶や、
子供が居たことによって見える大人の不思議な所など、
教えられる事が沢山あり、とても新鮮でした。
 ハル(小学生)は父親に「ゆうかい」されるのですが、
その父親と言えば、しっかりしておらず、だらしがなくっておまけにお金が無い人。
とても不器用な父親なのだけれど、どこか憎めない。
そういう父親にひっぱりまわされ「ゆうかいツアー」が始まりますが、
案の定、山あり谷あり。
赤っ恥をかきそうになる父親とどこか冷めているハルとが
なかなかのいいコンビで話は進みます。



ここに出てくる父親ですが、尊敬はあまりできないんですけど、
どこか頼れちゃうんですよね。
サバイバルなツアーを苦もなくやってのける力強さ、
悪い事をやっちゃう危険性もあるんだけど、
人生はこんなこともあるんだ、と体験させ何気に教えちゃう。
いつの間にか父親も魅力ある男性に換えてしまうイイ話でした。


人間動物園 … 連城三紀彦著■ (双葉社)
「このミステリーがすごい!」の2002年度第7位を取った作品です。
数十年ぶりに都会の街を埋め尽くす雪が振り、
都市機能にも麻痺が生じられる時、大物政治の孫娘が何者かに誘拐される。
身代金は1億円 ― この1億円を巡って大物政治家には
以前から疑惑の噂が流れていた。
被害者宅には家のあらゆる所に盗聴機がしかけられ、
警察はおろか被害者の親も行動がとれない。
誘拐事件前にも近所で飼われていた何匹かの動物が殺され、
血を流している。
お金の受け渡しが上手くゆかなければ、今度は子供の命が危ない・・・。


連城さんの作品が始めてだったせいか独特の言いまわしに慣れず、
比喩されるスケールの大きさに、つかみにくい一面があり戸惑いました。
しかし反抗に及んだ経緯や計画にも奥があったり、
二転三転する話に心を揺さぶられ、手に汗を握る事に。
ベテラン作家、流石書き慣れていらっしゃいますね〜!
読後は、ヤラレタ・・・って感じでした。


星に願いを。 … 川口晴著■ (竹書房文庫)
交通事故によって、失明し声も失ってしまった笙吾を懸命に看護し、
生きる希望を与えた看護師の奏。
次第にお互い居なくてはならない存在となり、順調に愛を育んでいる矢先、
またもや笙吾は事故に遭ってしまい、ついには命までをも失ってしまう。
ところがその後、笙吾に奇跡的な事が起き、再び奏と会える事になるが…。



思ったよりも軽めのラブストーリーで、
映画にもなった「ゴースト ニューヨークの幻」の日本版のような話かな。
悲劇的な事が多く、もどかしさいっぱいで最後のほうは涙、涙でした。
しかし、主人公以外の話が少なく物足りなさを感じました。

この本は映画を小説に換えて書かれたもので、
役者を想像して読む事ができ、なかなか入りやすいと思います。


GOTH … 乙一著■ (角川書店)
『このミステリーがすごい!in2002』で2位の作品。
僕と美少女の森野夜はクラスメート。ある日、森野は1冊の手帳を拾ってくる。
そしてその手帳の中には世間で話題になっている
連続猟奇殺人が行われたと思われる内容が記されており、
未だ発見されていない死体を確かめにいく…。
この「暗黒系」を始めとする連作5編の短編集です。

話には興味はあるものの、いざ読むと書き方が上手くリアルでリアルできゃぁ〜!です。
不気味さ万点、謎解きも面白いのですが乙一くん、しっかり笑わせてくれたりもします。
例えば…
『― 彼女が死体を発見する間隔はしだいに短くなっている。
この計算でいくと、今年か来年に四つめの死体を発見するだろう。
彼女が年を取ったとき、毎分一体の割合で死体を見つけることになるかもしれない。― 』
(「犬」から一部引用)
そっ、そんなワケないでしょ…ちょっと大袈裟だわよ♪なんて思ったり。


乙一くんって、まだ若いのに他の誰にも持っていないものがありますね。
今後も期待させていただきます、ありがとう!


疾走 … 重松清著■ (角川書店)
主人公は中学生シュウジ。
シュウジにはシュウイチという兄がいて頭が良く家族からも一目を置かれていた秀才。
そのシュウイチが高校に入りイジメを受け次第に壊れ始め、ついには事件を犯す。
事件をきっかけに父親は仕事を次々と失い、ついには失踪。
母親は父親の収入分を少しでも賄うため働くがうまくいかず、
ギャンブルに手を出してしまい、高額の借金を作り家に帰らなくなる。
シュウジは学校でも家でも「ひとり」になってしまう。
ある理由で友人から、カツあげ同然で無理にお金を借り、
人とのつながりを求め、故郷を離れる。
そして昔知り合ったやくざの女性を手がかりに大阪へと向かう。
しかし、会う事はできるものの、
事はスムーズには進まず、苦難を強いられる事になる…。


かなり辛くてどうしようもないくらい悲しくてとても切ない話です。
(とにかく何でもありって感じなんです)
重松さんの作品はいつも必ず救いがあり、
どん底に落ちても、いずれは這い上がって来るというのがあったはずなのですが、
「疾走」については、とことん落ちて行こうとするのです。
人間の寂しさ、悲しさ、脆さが凝縮され、
この本を読めば重松ワールド全てを味わう事ができると思います。
まだ重松さんの本を全て読み尽くしてはいないのですが、
私にとって今回の作品は重松作品の中でナンバーワンに輝いておりまする。


バカの壁 … 養老孟司著■ (新潮社)
「朝日・毎日・読売 各紙で大絶賛!」という帯が目を引いたり、
テレビでも話題になっていた本だったので、買ってしまいました。
さぞかし分かりやすく面白く書いてあるんだろうな、ぐらいに思って読んだのですが、
養老さんの視野の広さには不勉強の私はついていけませんでした。
学生の話に始まり、武士の話、宗教の話、戦争の話…百姓の話などなど。。
色んな方面に目を向けて話が進んでいて解る人には、
とても面白い本だと思うのですが…ごめんなさい。
個人的に言わせてもらうと、最初と最後があれば、それで済むような気がします。
そして、またも厚かましく私なりに言わせてもらうなら、
「自分が知りたくないことについては自首的に情報を遮断してしまっている」
― 本文抜粋。これを所謂「バカの壁」と私(著者)は名付けます。…なんてね。
そんな私、かなりの「バカの壁」です。


ZOO … 乙一著■ (集英社)
10篇からなる短編なんですが、
帯に書いてあったように私も「何なんだこれは。」と思いましたね。
設定が独特と言いましょうか、極端と言いましょうか、或いは大胆とでも言いましょうか…、
「未開の地」のような他の人が書いていないような世界がありました。
いつも思うのですが、乙一くんの小説は最後まで展開がわからず、
今回もコメディ調のものなのか、切な系なのか、結構マジメな話なのか、ハテハテ??で、
いつのまにか構えて読んでました(笑)


私のお気に入りを言うなら「血液を探せ!」でしょう。
登場人物それぞれの軽さが気持ち良くって、結末もなかなか爽やかなので。
グロさもありましたが、切な系が多い1冊でした。


熱球 … 重松清著■ (徳間書店)
会社を退職した主人公ユージは妻と愛娘を持つ家庭人。
だが、妻の和美はボストンの大学で研究員として働き、
夫婦は一時メール繋がりの生活をしている。
ユージは娘を連れ、父の待つ故郷周防市に住みつく。
そこで高校時代、野球で惜しくも甲子園出場を逃した、
周防高校の野球のコーチをすることとなる。
懐かしい故郷で会う、懐かしい昔の仲間たちとの話。


昔を振りかえることの多い、重松さんの話ですが、
この話も、私の中で共感できる事が沢山あり、苦しかったですね。
故郷を離れた時は、故郷の嫌なところばかりが見え、ムカムカしてくるが、
帰る(故郷に)頃になると優しくなれる ―― これ解ります。
他から移り住んでくる人には、冷たい土地なんだって、
田舎って、やっぱりどこも一緒なんでしょうかね…。
印象に残る言葉として、かいつまんで言うと、
野球の試合に限らず、大人になっても負け続けることばかりで、
勝ち続ける人なんて誰もいない。
ようやった!という励ましの言葉を胸に、
『人生という名のグラウンドに立って、
幸せという名の熱球を追い続けている』 。(一部本文抜粋)
…いやぁ〜!うまいこと言います、重松さん!
そうなんですよ、負けっぱなしでも追い続けなきゃいけないものがあるから、
くじけてる暇なんてないんですよね。

さくらえび … さくらももこ著■ (新潮社)
家族や友人などとの交流や日常生活をテーマとしたエッセイです。
久々に読んださくらさんのエッセイですが、
いつ読んでも粋が良くって手を抜いてないな、って思います。
さくらさん、さぞかし楽しい夫婦生活を営んでいらっしゃると思いきや、
お子様を引き取り離婚されていたんですね。
でも、かなり生活をエンジョイされている様で安心しました。
面白い話が多いのですが、特に気に入ったのは、
「息子いましめビデオ」で、
自分の母親はもしかして、ひょっとして憧れのさくらももこさん?
という息子の疑いを否定させるビデオを作ろう考えたのだけれど、
それだけではもったいないと思い、
息子の我侭ぶり、えばりぶり、必要なもの意外のお金の無駄遣いを注意した、
手の込んだ騙しっぷりのビデオの話が結構笑えました。
毒が無い話って、いいですね。

トワイライト … 重松清著■ (文芸春秋)
小学6年生の時に校庭に埋めた、
記念になるものを入れたタイムカプセルだったが、
廃校になるという情報を得、26年ぶりに数少ない同級生が集まった。
そして掘り出されたタイムカプセルの中には、
1人1人の思い入れのあるもの、自分に宛てた手紙、将来の自分像…。
昔、それぞれが考えていた未来は、
似ても似付かぬかなり厳しい現実だった。

重松さんの書く小説は優しいようでいて、とても現実的。
私も、まさかこういう風な生活をしているなんて考えもしませんでした。
いちど働き出した会社は、自分が嫌にならない限り、
定年まで勤められるものだと思っていたし、
誰もが暖かい夫婦生活を送れるものだと思っていました。
振り返らないと壊れかけている夢も思い出せないくらいになるなんて、
現実に流されていたんだな、って感じます。
同じ小学校で机を並べた皆がとても懐かしく、
それぞれの人生を歩んでいるんだなぁ…としみじみ思いました。

パレード … 川上弘美著■ (平凡社)
センセイの鞄」のツキコとセンセイが登場しています。
本筋はツキコがセンセイに語るごく短い話で、
どことなくゆったりした優しい時間が流れるような気がしてきます。
イラストが入ってて、見ていても可愛いし、あっという間に読めちゃいます。
どことなく懐かしい思いがするセンセイの訊き方。
「センセイの鞄」を読んだ後、読んでみてください。

ささらさや … 加納朋子著■ (幻冬舎)
この本は結構読んでいる人が多くて是非とも読みたかったんです。
夫を突然の事故で亡くしてしまい、幼子を持ったサヤは路頭に迷ってしまう。
気の優しいサヤは夫の家族側から子供を引き取りたいと言われ悩み苦しみ、
遠く離れた「佐々良」に住み移る。
住み移るはいいが、困る事が多く泣きたくなる事が沢山でてくる。
が、しかし夫があの世から心配し姿を変えてサヤの助けとなって現れる ―。


いいですよ、この話。ほわぁ〜んとしてて私向きなんですが。
亡くなった人が自分を心配し、現れてくれる。
そしてある日、自分の役目は終って、「後、頑張れよ」と
その日を境に現れなくなる ― ね? いいと思いません?
ホントにこんな話あればいいのに…。

手紙 … 東野圭吾著■ (毎日新聞社)
直木賞候補作に挙がった作品で、
父と母を亡くし、兄と弟で力を合わせ生きてきた。
だが、兄は弟を大学に行かせたいがため、
進学資金作りに強盗殺人を犯してしまい、刑務所生活になってしまう。
その中から送られる弟に宛てた手紙。
だが、弟は社会的に殺人者の家族を持つ者として世間から
レッテルを貼られ何事もうまくいかず苦しい生活を強いられている ― 。
そんな事を知らずにただ弟の返事(手紙)を待つ兄…。


罪と罰 ― こういう話は特別珍しい話ではないのですが、
加害者側の家族も被害者というだという事に気付かされます。
お互い相手のことを思うあまり行き過ぎてしまうこと、見えずにいることが
何とも悲しいものだなぁ、と思ってしまいました。

真保さんの話とかぶる所もあるけれど、心に残る話ではないでしょうか。

村上ラヂオ … 村上春樹著■ (マガジンハウス)
「anan」に掲載されていたエッセイがこの本になりました。
若い読者を対象にして書かれていた様で、
とても親切な書き方で解りやすいんです。
特に食べ物の話が多く、その描写も鮮明に書かれてあるので、
空腹の時に読むと、めちゃくちゃその物が食べたくなってきます。
心に残っている話は「猫の自殺」で、猫でも(猫さんごめん)自殺するんだって。
春樹さんの考え同様、猫も生きる事が嫌になってくるのかな。衝撃的な話でした。


春樹さんの小説は独特の世界があって、私には入りにくいのですが、
今回のエッセイは話題豊富で、なかなか面白く読み易かったです。

神々のプロムナード … 鈴木光司著■ (講談社)
あるテレビ番組をきっかけに謎の失踪事件が続く。
その裏に見えてくるのは、新宗教の影。
テレビから伝えられたものは何だったのか、目的は何なのか教祖はいったい誰…そして。


8年の歳月を経て作られた本なのです。
よく書けてます。よく書けてました。が…何だこれっ??って話で、
いっぱい食わされた感じがします。
関係のない話を無理やりこじつけたり、この人を登場させた意味は何なの?
と読んでいてもハテハテ・・・。
ダラダラした話の展開になっているような感じで、段々飽きてきちゃいました。
結末は、こんな感じで終っちゃっていいの?というくらいパッとせず、
もっとはっきりした感じの話の方が良かったかな、と思うのですが…。

センセイの鞄 … 川上弘美著■ (平凡社)
ネットでも人気があったので、絶対に読みたいと思っていたのですが、
読むまでずっと「児童書」っぽいものかと思っていました。
ですが、全然違っていて、とってもイイ大人の恋愛小説。
高校の時教わった古文の先生と、その生徒の恋愛小説で、
10数年の歳月を経て居酒屋で何気の出会いが始まります。
そこから飲み友達のお付き合いになり、
いつもの店で、お互い相手を見かけなければ気になる存在になっていきます。


2人の間での呼び方は「センセイ」と「ツキコさん」で、
くっつきすぎず離れすぎずの一定の距離間を持っての恋愛が、ステキでした。
センセイは私の年とも年齢差がかなりあります。
しかし、読むうちにセンセイの心の深さ、言い方を替えれば「抽斗」の多さに魅力を感じ、
私までこのセンセイの事が好きになってしまいました。
ツキコさんも心の温かい人でセンセイの事を気にするそぶりを見せず、
実はすごくセンセイの健康面や今後の自分達の事を考えている人。
こんなさり気ない女性になりたいですよ、私も。
切ない話なんだけど、ほのぼのとしたストーリーで読んでよかったな、と思える本でした。