誘拐症候群 …貫井 徳郎著■
症候群シリーズの『失踪症候群』に続く第2作目です。
まだ前作を読んでおらず、話がわかるのだろうかと心配でしたが
読み終えた時点では問題なかったようです。
貫井さんの本を読むとデビュー作の『慟哭』の出来を期待してしまうんですよね。
このストーリーは身代金を要求しての連続誘拐事件。
小さい子供が誘拐されるのですが、その身代金はそれ程も多額ではなく、
家の蓄えを崩せばどうにか払える程度の金額なので、
被害家族は警察に言わず、犯人の言う通り金を用立てる。
犯人も警察に言えば子供の命を保証しないという残忍さを持っていた。
これが被害を大きくした。
そしてとうとう誘拐殺人事件までに発展してしまう。
この計画犯、実行犯はいったい誰なのか。真の目的は何なのか…。

最初からかなり入り込めるストーリーでした。
読み進めるうちに、やっぱりこの作品も犯人は心に傷を持った人なのでは、と思うのですが、
カーブを描いた作りになっていました。
同じ手(『慟哭』のような)は2度は使わないって事でしょうか。
読み終りが近くになるにつれ、盛り上がりにすごく期待があったのですが、
これいきすぎ〜!やりすぎ〜!こんな事はなかろうに…という場面がでてきます。
ここまで書けているのに、どうしてこれを最後まで引っ張らなかったのかな、なんて。
読み終っても、まだ先があるのではないかと思われる作品なんですが、
3作目の『殺人症候群』にこの話は入って来ないんですよね、きっと。
…と、こんな事を言っているのですが、私のお勧めの1冊です。

奪取 … 真保裕一著■
第10回山本周五郎賞、第50回日本推理作家協会賞長編部門受賞、
そして『このミステリーがすごい』の97年度第2位を獲得。
この作品は真保さんファンなら誰もが一押しする作品で、早く読みたい!と思っていました。
この作品を一言で言うと、偽札作りに命を燃やす若き2人の話。
2人のコンビネーションが面白く書かれ、
頭脳労働者と肉体労働者の分担がうまい具合に話とマッチしています。
世を欺き、失敗を繰り返しながらも挑戦し果敢に挑んでいくストーリー。
危機が来る度にスルリと交わしていくテンポの良さ。
真保さんの取材力にも素晴らしいものがあり、事細かく書かれてあるのにビックリします。
男の友情に涙を奪われたり、オチもあったりと、多方面で楽しめる作品です。
終盤になるにつれ、ドキドキハラハラさせられる場面が続き、
エピローグまでも筆力が衰えず読者を楽しませてくれます。
最後があんな風になるとは…(笑)
かなりの長編なので、未読の方、覚悟して読んでくださいネ。

転生 … 貫井徳郎著■
貫井徳郎さんの始めての青春恋愛ミステリです。
主人公(和泉くん)は脳死のドナー(臓器提供者)から心臓移植を受けるのですが、
移植を受けてからというもの以前の自分とちょっと違うことに気付きます。
突然絵がうまくなる、クラシック音楽の作曲家の名前がスラスラと出て来る、
夢の中では知らない女性と親しげにしている…等等。
これは元の心臓の持ち主の記憶なのか??
本来医者からもタブーとされているドナーを探し求め、謎を究明していく。
そして結末は…。

あれ〜、これってよくあるストーリーではないの!と思ったのですが、
貫井さんらしく、ひとヒネリある話で結末もグッドでした。
しかし、キャラに少しばかり無理があったのではないかなと思われる『雅明君』、
小学生にしては考える事が大人並です。でも今の小学生ってこうなの?(謎)
今回の作品はいつもの貫井さんにしてはマイルドに仕上がっていました。
主人公の素人っぱさがイイ!

暗いところで待ち合わせ … 乙一著■
ミステリーではないと思って手にとった本でしたが、
乙一さんの手掛けるものはやはりミステリでした。
タイトルを重視している私は恋愛物なのかな、という印象を受け、ほぼ当たっていました。

視力を失っている一人暮らしのミチルの家に、
職場で人付き合いがうまくできずに悩むアキヒロが、
殺人事件の容疑者として隠れ込み、奇妙な同棲生活が始まる。

これは今の時代にふさわしい、人間関係・ひきこもりの話が主体になっています。
目の見えないミチルにとって外の世界は暗闇同然。
家の中のほうが灯りがついていなくても勝手がわかる、との理由で家の中に居たがる。
そういうミチルを見ている友人は、これではいけないと外に連れ出そうとする。
一方、アキヒロは集団で群れ合うのが苦手で、いつも冷めた目で人を見ている。
友達と呼べる人は周りにはいない。
こんな2人がお互いの距離を保ちながらうまく生活をしていく。
自分だけで生きていけると強がってみるものの、
人がくれる力は偉大だと少しずつ気付かされていきます。
これを読むと人はひとりでは生きていけないという実感が伝わってきますね〜。
たまにはこういうミステリも心が和んでいい感じでした。

烙印 … 貫井徳郎著■
このタイトルがどうしてつけられたのか、どんな烙印なのか、
貫井ワールドにうまく誘い込まれてしまいました。
警察勤務の迫水の妻、綺子が何も言わず謎の自殺をする。
迫水は何が原因だったのか生前の綺子の交友関係から追求していく。
そして思わぬ事件へと巻き込まれていってしまう…。

デビュー作『慟哭』同様、主人公は警察に勤め、
大事なものを亡くした後は退職してしまうという話の流れは似ています。
仕事を捨ててまで探さなくてはならないもの、
自分の命をかけてでも守らなければならないものが貫井さんの作品にはあります。
この作品も切ないですね〜。
キャラの事を言えば、迫水の親友の後東さんは、
自分の身を捨ててでも相手を助けるという尊敬的な人柄なのですが、
可哀想かな、努力が報われません!!
でも、迫水は親友の為にやってくれます(ネタバレ危険)
巧妙な手口や謎だらけの人間関係で真相がなかなか分からず、
二転三転を繰りかえすこのミステリは最後まで気を抜く事ができません。
中編の小説ですけど、面白さと深さはたっぷり!満足の域です。

ちょっとしたことで かわいがられる人、敬遠される人 …山崎武也著 ■
世を渡っていく上で、かわいがられる人は得するよね、と思って購入した1冊です。
読んでみれば、その通り!と思われる事ばかりだったのですが、
なかなか自分にはできない事ばかり。
どんな人がかわいがられるのか、簡単に言うと、
気配りができる人、相手を立てて自分は脇役にまわる人、素直な人、
自分の感情を後回しにする人、が好感度が良く、かわいがられるようです。
著者の個人的な好みも入っているので、中身には多少賛同できない部分もあるのですが、
書かれている事を頭の中に置いて行動すると、良い方向に行くのではないかと思います。

ひとりの意見として、こういう考え方もあるのかなという感じの本でした。

レフトハンド … 中井拓志著■
第4回に本ホラー小説大賞長編賞受賞作品です。
製薬会社で、レフトハンドウィルス(LHV)と呼ばれる致死率100%ウィルス漏洩事件が発生した。
そのウィルスの症状とは左腕にウロコ状のさけ目ができ、激しい下痢、発汗が続き、
やがて左腕は数倍に腫れあがり裂壊しそこからは飴状のジェルが大量に分泌される。
そしてそこはケロイド状になり何度かの進化を繰り返し、
感染者の身体から離脱してしまう、という恐ろしいもの。
細かく書かれているのがとてもリアルで気持ちが悪くなってきます。
まるで梅図かずおの漫画のような、ぎゃぁぁ〜!とか、ぐわわぁぁぁ〜!
というオゾマシイ感じが読後も深く頭の中に残りました。
途中、あまりにも話が先走りして、飛躍しすぎではないかと思われる所もあったのですが、
これくらいの大胆さもホラー小説には必要なのでしょう。
ちょっと言葉が乱暴かとも感じたのですが、緊迫感が出て雰囲気もうまく伝わってくるので、
刺激のある物を読みたい、という方にお勧めです。
心臓の弱い方は覚悟して読んでくださいね。

プラナリア … 山本文緒著■
表題作は第124回直木賞受賞作品です。
この本は5編の短編集で、仕事をしない女性がテーマになっています。
現実味がありドキドキさせられる程、不器用で性格が可愛い5人それぞれの女性達。
こんな生き方をしている女性どこかにいるかもしれないな、
と思う程、リアルに書かれていました。
『プラナリア』で言えば、分かっていながら同じ失敗を繰りかえしてしまう女性。
主人公は頭の中で、この事だけは言ってはいけないと思っていながら、
つい口に出してしまい皆を無口にさせてしまう。
読者(私だけか…)の期待通りに裏切ってくれる書き方は、
山本文緒さんの好きなところでした。
女性の揺れる気持ちが上手く書かれていて、読み終るのがもったいない程。
これから山本文緒ワールドにはまっていきそうです。

「プラス思考の習慣」で道は開ける …阿奈靖雄著■
この本を手にとった甲斐がありました!
たった本体価格514円で物事が前向きに考えられるようになり、自信を持つ事ができます。
潜在意識の使いかたや人との関わりかた、そして有効な時間の使いかた等、
普段は気にしていないような事が意外とマイナス思考系だったんだな、と気付く事ができ、
フィードバックが受けられます。
ここで何を言ってもこれは新書なもので、ネタバレに繋がってしまうのですが…、
大事なのはどんな苦境に立ってもプラス思考にしてしまうクセをつけるという事。
…タイトルそのままなんですが。。(笑)
それが潜在意識となってうまく組込まれられれば、人生はうまくいくはず!
誰でも挑戦できるオイシイ話が例を挙げて書かれてあります。絶対読む価値あり!

最後の息子 … 吉田修一著■
3篇からなる短編小説で、
表題作は第84回文學界新人賞受賞作品です。
芥川賞作家はどんな作品を書いてたりするのかな…と気にはなっていたのですが・・・・。

表題作はオカマ「閻魔ちゃん」と同棲する主人公「ボク」の作品です。
少しばかり怪しいストーリーなのですが、そこから学びとれるものは数々ありました。
キーポイントは『愛』。その深さや種類を上手く巧みにストーリーに組込まれています。
「閻魔ちゃん」キャラは人柄が良く、辛抱強く女性にも愛されるのではないでしょうか。
『Water』という3作目の作品ですが、かなり私のお勧めです。
水泳部で活躍する高校生の話で、水泳だけに瑞瑞しく書かれてあり、
登場人物の好感度は抜群です。
世の中には「一人は皆のために皆は一人のために」という言葉がありますが、
この作品にピッタリだと思います。
笑いの中にも真面目さがあり、相手の事を思いやるすばらしい作品。ぜひご一読ください。

心室細動 … 結城五郎著■
第15回サントリーミステリー大賞受賞作です。
執筆者はお医者様であり、この作品は医療ミステリーです。
教授の椅子を巡っての闘争→医療ミス発覚→失墜という構図が一般的だと思うのですが、
これも例外ではありませんでした。
尿道結石の患者が検査の為にある造影剤を投与されたのですが、
患者はその造影剤に強いアレルギー反応を持っていました。
が、しかしナースの手違い、医者の確認ミスによって注射し死亡させてしまう。
表向きは突然の心臓細動と言い、本当は医療ミス。
家族は、その時必死の治療をしてくれた医師たちに感謝し、何も疑わず20年が経た。
そしてある事をきっかけにして、
当時の関係者や教授の椅子を狙う医者上原に、
何者かが脅迫をしかけ、医療ミスが暴露されそうになる。

私が思うに、この話には無理があるような気がします。
脅迫された多額のお金がポンポン飛び交うのは安易すぎるし、
死に様もいまいち納得ができないし、何故なんだろう、どこに行ったのよ…、
と疑問がフツフツと沸いてきました。

結城さんの他の作品に期待をしよう!

恋愛中毒 …山本文緒著■
この作品は第20回吉川英治文学新人賞作品です。
主人公の水無月が事務所の後輩に自分の過去を振り返って「恋愛話」を語っていきます。
恋愛度にも深さがあると思うのですが、
相手を思うばかりに尽くしてしまい身を滅ぼすまでに至ってしまうこの女性の生き方は、
羨ましくも思えるのですが、危険を孕みすぎています。
一人の男性に身を委ねるのは心地よい、けれども全身を委ね過ぎてはいけないという、
教訓めいたストーリーに、私自信の日常を重ね合わせてしまいました。
愛されている時には感じず、愛されていないと感じるようになってから
「愛の深さ」によって、どうしようもない胸の痛みに気付き、行動を起してしまう。
女性の心の動きがとても上手く書かれてあり、当事者になったつもりにさせられ、
どんどんページを繰らせてしまう筆力は素晴らしい。
『創路』先生の物の考え方は、共感し難い部分があるけれど、
前向きな考え方には成功の秘訣めいたものを感じる事ができました。
これからも山本文緒さんの他小説に目を通していきたいと思います。

恋愛の深追いを感じさせる作品をお求めの方にお勧めです。

■ジャンプ … 佐藤正午著■
恋愛小説の達人と言われる佐藤正午さんの本を読むのはこれが始めて。
これもミステリー小説になるのですが、ソフトです。
彼氏が習慣としている朝食の『りんご』を買いに深夜、彼女は近くのコンビニまで「5分で戻って来るから」と言い残し、そして姿を消してしまう。
彼氏は謎に満ちた彼女の失踪を、
足跡を辿りながら一つ一つ探っていきます。
あの晩、どんな事があったのか、何が起こったのか、どこに行ってしまったのか・・・。

出だしは面白かったのですが、単調で読んでてもどうでもよくなってしまいました。
出て来る人達が好きにはなれず、
何でこんな言いかたするの?どうしてそういう事しちゃうの?とイライラしっぱなし。
話も細かく書かれてある、と言えば誉め言葉になるのですが、
くどすぎて、いつまで続くんだろう…と。。
でも、その詳しい説明でありながら、中途半端に納得しなくちゃいけないというのが、
私の性に合わないというか、何というか…。

私の理解力が及ばない作品で、心に余裕がある時読めたなら、
もっと違う感想になっていたことでしょう。

怪しい人々 … 東野圭吾著■
タイトルから想像して『毒笑小説』や『怪笑小説』と似たような小説だと思っていたのですが、
これは立派なミステリー小説でした。
7篇の短篇になっており、それぞれに「怪しいなぁ…」と思われる人が、謎を生んでいきます。
笑ってしまう話やほろりとしてしまう話、気付かされる事等で構成されてあり、
東野さんらしい趣向をこらして読者を楽しませてくれます。
話の一つに出て来るのですが、勝負の「判定」(ここでは野球でしたが)を巡って変ってしまう人生があるという事。
他人が無責任にも「あの時、あいつが○○していなければ」と言ってしまい、
その渦中にいる本人には一生涯残る心の傷になってしまいます。
審判と選手の話合いが思うようにできず貯まる誤解やわだかまり、思い出される世間の目。
次第に主人公は犯罪に陥ってしまいます…。
これは現実にもありそうなストーリーだと思います。
勝負の厳しさと世間の目の冷たさをそれ程も知らない私は、これを読んで、はっとさせられました。
…相手に思いやる心を持って、気をつけなければならない事。
そして私のひと押しは何と言ってもそれぞれの結末です。
各ストーリーをどのように締めくくってあるのか、とても楽しみでした。

長いミステリーの結末が待てない、「イライラ型」」の人にぜひともお勧めしたい小説です。

黒衣の女 … 折原一著■
ミステリーの大御所、折原一さんのミステリーです。
話の流れがとてもスムーズで、とても分かりやすい!分かりやすいけれども、謎は最後にならないと解けず、犯人が誰なのか、どういうつながりがあるのか、かなり考えました。
解けそうなのに解けない、何とももどかしい思い。
私の好きな人物像たち(…内緒です)が描かれてあるので、興味本位でどんどん読み進める事ができました。
読者をトリックに巻きこみ、今まで読んだ事のないタネあかしが(ページ指定で)
の手法で描いてあり、しっかり納得させられてしまいました。…ここで変だ、と思えば謎は解けたわけか…っていう具合に。

肩の凝らないミステリーを読むなら、この1冊をお勧めします。

puzzle … 恩田陸著■
短篇のミステリーはあまり読まないのですが、忙しい合間にはやっぱり短めの本で気分転換…。
鼎島(かなえとう)で起こった、3人の身元及び死因不明の事件の謎に挑む、2人の検事の攻防を描いています。
一見、共通点がなさそうな事件ですが、昔の知り合いがその死亡者だった事から、
1人の検事がこの事件の状況話を勧めていくのですが…。
細かい動作にもちゃんと謎に結びつくものがあったとは、流石に考え及ずでした。

この本を読んで始めて知ったのですが、大正天皇が重態に陥った時『光文』と新年号が内定していて、
そして天皇が崩御され、年号発表直前になってその『光文』の事が、毎日新聞にスクープされてしまい、急遽、別に用意されていた『昭和』になったとか。
短篇なのに、知識が増えて大満足の1冊でした。

… 乃南アサ著■
臍、血流、つむじ、尻、顎、をタイトルとする5つの短篇小説集です。
ここで出て来る主人公はどれも個性的で、とても真面目な性格。それがどれも危険です。
一言で言うと「度が過ぎる」という事でしょう。それが話をとても面白くしています。
そこまで考えなくても、そこまでやらなくても…と思うのですが、普段誰でも考えている事で、
妙に納得させられ、私の思っている事の延長線上には、この本のようなストーリーができ上がるのではないかと。
乃南さんのストーリー仕立てになると、かなり面白くなるこの『躯』。題材は身近な所にもあるんですね。
読み出したら最後のオチが気になり、つい夜更かしして読みたくなる本です。

慟哭 … 貫井徳郎著■
この本は関東で大ブレイクしているとか。関西ではどこのお店でも山積みになってる訳ではなく、なかなか店を外すと見つからない代物。
タイトルの『慟哭』の意味は、悲しみのために声をあげて激しく泣くこと。主人公がそういう立場に置かれる話なんだろうな、と半ば予想して読み始めました。
2つの話が同時展開していき、どこで1つに交わるのか独自の構想を立てていましたが、
思うように辻褄が合ってきません。話術にすっかりはめられていました。。最後になって、あぁ〜!あれはそうだったのか、と納得させられる事に。
読者を掴んだら放さない話の展開、2度読みも楽しめるのではないかと思います。

著者なのですが、1968年生まれ。この作品が作られた年に遡って考えると25歳の若さだったんです!(私はもっと年配の方だと思っていました。)力強い文体、個性的な人物像、警察組織の詳しさに驚きを隠す事ができません。
今まで名前すら知らなかったのですが、他の作品も読んでみたいと思いました。

あしたのロボット … 瀬名秀明著■
この話は近未来小説なのだけれども、今後ロボットと人間が共存する時代も遠からずやって来るのではないか、と予感させられます。
この本のモチーフになっているのは『アトム』。私たちの永遠のアイドルです。
人間と人間の間にはロボットが存在し、ロボットを通じてビジネスがあり明日が作られる未来。デジタル的な会話で済ませられる世界はちょっと寂しく、勝手に作られては時代と共に古くなり飽きられ捨てられていくのは可愛そうだなぁ…、
と思うんですけど時代の流れとは、そういう事にもなるのでしょう。
ロボットを作るのは人間ですが、そこに何かしらの「心」も求めてしまうのも人間。
どうしてもロボットには希望と期待がかかっちゃうんですよね。
アトムの初期設定は2003年4月7日に生まれます(読んで知ったのですが…)。
この本はこの時期、タイムリーなのでかなりの現実味を味わえるのでしょう。

裏庭 … 梨木 香歩著■
これってホントに児童文学なのぉ?と思うくらい、家族について語っていたりします。
洋館の『裏庭』と呼ばれる秘密の庭に冒険に行くストーリーで、その冒険の中でくり広げられる主人公は色んな事と遭遇し、時には喜び時には悲しみ、教訓みたいなものを勝ち取っていきます。
主人公の女の子像ですが、はっきり言って多感です。相手を思う気持ちや優しさに浸る「安心」を感じ取り、成長していくのですが、ビックリするくらい核心をついています。両親が自分に対する気持ちも、こうなんじゃないかなという具合にはっきりと書かれているんです。これって大人が考える事なんじゃ…って思いましたけど。

出てくる場面場面でタジタジになる私なのですが…。
冒険している最中に出て来る『傷つくのを恐れてはいけない、傷から何かを学びとれ』(表現は変えています)という言葉がありますが、私には厳しい言葉だなぁ…と。わかっちゃいるけど、学びとろうと思っているうちについ流されていってしまう背景があり、なんて言い訳しているけどかなり反省させられます。
『家庭』という字は家に庭と書き、家に庭がなくても名の中に庭がある、という言葉は実に温かい言葉で、『庭なし』なんて平気で喋っている私はこれを知ると、恥かしくなってきました。

総合的にとってもよく書かれています。表現も豊かです。でも子供の目から見たら、この本はどんな風に感じるのでしょう。