Y … 佐藤正午著■
本屋さんで、どうしてこの本の評価がいつも上位を占めているのか、とても不思議でした。
もういちど、あの頃に戻れたなら…とは誰もがいちどは思う事だし、
それ程珍しいストーリーでもないのに、何で感動を呼ぶのだろうと思っていましたが…。


ある日、1本の奇妙な電話がかかってきたことが発端となり物語は始まる。
その電話の主は秋間の親友だったというが、当の秋間は覚えがない。
そして数日後、電話の主から秘書を通して、
貸し金庫に預けられていた500万円の現金と
1枚の物語が入っているフロッピーを受け取る。
その物語を読むうちに秋間も物語の「人生」に引き込まれていってしまう。


ただのミステリーだと思って読んでいくと、ミステリーかつラブストーリーなんです。
愛の深さ、人生の大切さ、かけがえのない人とは、
その数々の疑問と答えがここには書かれてあります。
人生を遡って幾度となく繰り返す描写がとてもリアルで、
もしかしたら、こういう話が今どこかで現実に起こっているのかもしれない、と思う程。
大人のラブストーリーで落ちついた感じに仕上がっています。
読んでよかったなぁ、もういちど読みたいと思える本でした。

平面いぬ。… 乙一著■
表題作を含め4編からなる短編小説。
ストーリーがどれも大胆でさっぱり感があり、とても気持ち良いんです。
細かい事は書かない、読者にも考えるゆとりを持たせない強引さ、
知らず知らず乙一ワールドにはめられていきます。
切なさに涙がキラリ、心に残る作品です。私は『BLUE』がお気に入り♪

東京バカッ花 … 室井滋著■
田舎から大学進学のため東京に来た室井さんが語る、
楽しさあり、苦悩ありの生活が書かれてあります。
東京にはこんなパワーを持った人がいる、
こんなアルバイトで学費を稼いだ、ビックリするような事が起きた、
その時はかなり必死だった…等など、
途中で息つく暇もない程の話が詰まっています。
室井さんはこういった話を面白く書かれていますが、
きっと当時の彼女は、何をするにも必死だったに違いありません。
これを読んで、私も東京に行ってみたい気はしますが、
大都会で生きて行くには覚悟が必要だとしみじみ思いました。


今回の本もニジュウマルの面白さです。

本とり虫 … 群ようこ著■
気になってた作家さんだったのですが、読む機会がなかなか作れず、
今回思いきって、読んでみました。
この本は、本好きの群さんが今まで読んで来られた本を紹介してあります。
ジャンルが幅広く、お裁縫の本から古典の本まで、
群さんがどのようにその本を楽しめたのかが書いてあるので、
苦手意識がある分野でも、たまには目を通してみるかな、と思ってしまいます。
昔の群さんは、私以上に積読本が多かったようで内心ホッとしましたが、
今ではそんなに無いみたい。
なぜなら「本棚を全部、読破した本で埋まるようにするのが夢」(本文抜粋)、
だからそうです。。
本好き、その上作家さんという事もあって、これはなかなか楽しめました。

黒と茶の幻想 … 恩田陸著■
始めて恩田さんの超長編(619ページ)を読みました。
カラクリ有りのミステリなのかと思いきや、誰も殺されたりいなくなったりしないんです。
話は大学時代の親友4人が40歳も近くなった頃、Y島に旅行に出かけます。
旅のテーマは「非日常」と「安楽椅子紀行」。
4人の章に分かれ、昔の出来事や現在の思い等を絡め物語は進んでいきます。
当時皆が気にしていた出来事を当事者の1人が真実をを明かしたり、
1人の謎の夢を追求する等、過去を清算する旅。
4人の謎は解決への道へと行き着くことができるのか…。


恩田さんの話は、いつもとても綺麗で色彩が感じられます。
知りたい事が知りたいように、ちゃんと表現されていて、読後感もスッキリ。
ミステリなのに、ミステリっぽくない純文学風の創りが面白かったです。
自分の本ならば、もう1回じっくりと読みたいと思う本でした。

ふぐママ … 室井滋著■
またまた室井さんの面白さを求めて読んじゃいました。
今回は室井さんのマネージャーの「ふぐママ」についてのエピソードです。
このふぐママさん、
自分で「私ね、もの凄いの。自分でもクラクラするくらい」(本文より抜粋)
と豪語するくらい爆発的なパワーの持ち主なんです。
走り出したら止まらない、いえ止まれない方なもので、
その分、失敗や成功も数々あり、経験が豊で頼り甲斐のある母親的存在の女性です。
室井さんとも良いコンビなようで、
お互いフォローしながらの日常が微笑ましく綴られていました。
この本を読んでいると、人っていいな、人があっての自分だな、と思えちゃうんです。
また次、読んじゃいそう…。

ないもの、あります … クラフト・エヴィング商會著■
吉田篤弘さん、吉田浩美さんの2人を中心とした製作ユニットだそうです。
このお店(本)では、ないものがある?どんなものなのか、と興味半分で読みました。
何のことはない慣用句っぽいモノです。
例を挙げてみるなら、「堪忍袋の緒」「相槌」「口車」などなど。
手に入れてみたいとは思うけれど、手に入れる事ができない、
よく耳にはするけど、見た事のないもの、
そういうものがこの本ではイラスト入りで紹介されています。
見ることがないものを説明文入りで商品として見れるのは、
とってもユニークなアイデア本。
私も欲しくなってきたけれど、使うところを間違えるとちょっと恐ろしいかな(笑)
疲れた時に、ボーッとして読むとなかなか楽しめるのでは。

おれは非情勤 … 東野圭吾著■
「5年の学習」〜「6年の学習」でシリーズで掲載されていた表題作及び他短編2編。
文庫化になるまで様々な事情があり何と4年もかかった幻とも言われた作品です。
非常勤講師「おれ」は生来の仕事嫌いでお金がなくとも好きな事をしていたい。
もうひとつ言えば教師だって好きじゃないタイトル文字通り「非情勤講師」。
その非情勤講師が非常勤に行った小学校先で謎を解き明かして行く。
ちょっとした笑いあり、トリックあり、教えありの気楽なストーリー。



東野さんって小学生にでも読めるミステリを書いてたんですね。
でも普通小学生向きだったら、べらんめぇ口調では書かないと思うのですが、
ここでは、驚くほどよく出てきます。
世間の目の恐さは東野さんにはもう関係ないのでしょう。
そういう東野さんですが小学生に対すること細やかな心遣いが、
文の中に隠されて(別に隠してもないけれど)います。
この非情勤講師「おれ」の性格ですがクールでドライ。
はっきり言っちゃいますが、私こういう人が好きなので即、惚れてしまいました。
東野さん、もっともっとこういう本(クールな男性が出てくる)を出してくださぁい♪

殺人症候群 … 貫井徳郎著■
『失踪症候群』、『誘拐症候群』に続くシリーズ3作目になるこの症候群。
2段組み、そして460ページにもなる長編です。
被害者は少年たちによって殺された。しかし少年法で守られている犯人は、
卑劣な殺人を犯しても少年院に行くだけで、
再び世間に舞い戻って何くわぬ顔でまた犯罪を犯す。
納得がいかないのは被害者家族たち。
いつまでも失った家族を思い救われない被害者家族は、
被害者団体を作り活動するが、
そこで合法と言えないやり方で、救いを求めるようにある人に「依頼」をする。
一方、自分の子供の心臓移植を待ち望んでいる和子は、
いつ来るともわからないドナーからの順番を待ちきれず、
ドナーを探し事故に見せかけ殺しを続ける…。
いったい何が罪で何が罰なのか…。


これ、なかなかスゴイ話です。深い深い内容で、文句なし大満足でございます。
何の受賞作でもないのが、不思議なくらいです。
この話自体があまりにも強烈だからでしょうか…。
2つの話が交差して1つに交わっていくのですが、話の展開がテンポよく、
いつも興味をそそられ、最初から最後まで引き込まれっぱなしでした。
…心の傷は最後に切なさを残す・・・あー、あわれあわれ。。。
私はこの作品を第2の『慟哭』と呼びましょう!
症候群3作目、これが最後でいいのですが、
終って欲しくないと思う気持ちもあります。
なぜならシリーズにいつも出てくる元警察官、現警察官、
この方たちとその人間関係に触れられないのが寂しいから。

繋がれた明日 … 真保裕一著■
今年は新刊が1冊しか出さない、という真保さんのひと言で珍しく購入しました。
殺人を犯した主人公(中道隆太)が受刑を経て仮釈放が許された。
少しずつ社会復帰の準備を始めるが、
人殺しの中傷ビラが隆太の生活域周辺にばら撒かれ、
世間からの厳しい目が向けられていく。



これは中傷ビラの犯人をつきとめるのではなく、
殺人犯の心情が書かれている作品です。
(ビラの犯人はその結果として分かるのですが)
神戸の事件の事もありタイムリーな話であったため大変興味深く、
少年刑務所の様子、世間がその少年を今後どう受け入れていくかを、
人ごとではなく自分の事のように考えて読みました。
加害者の少年の反発する気持ち、更正していこうとする姿、そして悔恨の日々、
被害者側の事件後の生活や苦悩が心を打ちます。
全体的には話の盛り上がりがなく、
後半ぐらいからは読んでいてもダレてきてしまいました。
それと、あの話はどうなちゃったの、あの人はどこへ行っちゃったの、という疑問も。。
もうちょっと「あっ!」っと思わせるものが欲しかったかなぁ。。


ミッドナイト・コール … 田口 ランディ著 ■

8篇の短編集からなっており、自分を真正面から見つめ、
本当の恋を求めていく女性たちを描いています。
私には、こんな考えかたができないなと思わせる生き方をしている主人公たちが、
とてもイキイキして感じられました。
彼氏にフラレた事を卑屈に感じることなく、
笑い話にまでにできる明るさがとても気持ち良く、
読後感もスッキリです。


ピリオド … 乃南 アサ著 ■

長編と言えど、読むのにえらく時間がかかりました。
この本は読み始めからダークな雰囲気が漂って、
読み進んでいったら更にダークになり、
女(私だけかも)の嫌な面とも向き合わなければならなくて、
私にはちょっとキツイ1冊でした。

そうは言うものの・・・、
読む前に表紙の裏(文庫の)に書いてある
「人は自分の人生にいくつかのピリオドを打ちながら進んでいく」
という乃南さんの言葉にピンとくるものがなかったのですが、
読み終えて再度読むと、その言葉の意味や深さがしっかり伝わってきました。


事故係 生稲昇太の多感 … 首藤 瓜於著 ■
江戸川乱歩賞作家の首藤さん、2つ目の作品です。

警察の交通課事故係に勤務する22歳の若手巡査の
苦脳あり楽しさありのストーリーです。
仕事の厳しさや世間から常に見張られている『警察』という職業、
上司部下の関係にもこの業界はなかなか大変だな、と改めて実感しました。
5章構成の短編ですが、どれも深く突っ込んで書かれていないのが、ちょっと残念でした。

ビフォア・ラン … 重松 清著 ■
重松さんの処女作です。
トラウマは作られるもので作るものではない、と思っていた私。
ちょっと唖然とさせられました。

あらすじは…。
主人公、優は平凡な高校生生活に足りないもの「トラウマ」のために、
同級生と一緒にまだ死んでもいない同級生まゆみの墓を作る。
そしてある日まゆみが突然彼らの前に現れ、事実と違う過去を話始め、
その話に周りの人が振り回されていく。

最初は笑える話だったのに、だんだん笑えなくなってくるストーリー展開。
そして重松さん独特の言いまわし(表現の仕方)がプラスされ、
ストーリー後半では涙が止まりませんでした。
しかしながら読後が爽やかで、読んで良かったなと思わせてくれる作品でした。

白い手 … 椎名 誠著 ■
珍しくエッセイを読んでみました。
何かの雑誌に、「心に残る本」として取りあげられていた本です。
この話は著者が小学校時代だった頃の事です。友達を思いやり、
1つの事にも一生懸命で、
その度に一喜一憂している子供らしい描写が、とてもよく書かれています。
読んでいて、こんな子いたな、
とか子供心にも口に出さないまでも分かっていた事あるよな、
なんて自分の小さい頃にも当てはまる箇所があり、とても懐かしく思いました。
忘れかけている幼少時代を呼び戻してくれるかのような1冊でした。

白く長い廊下 … 川田 弥一郎 ■
この本は第38回江戸川乱歩賞受賞作で、この賞初の医学ミステリーです。
医学物はあまり読んだ事がなかったのですが、
普段あまり知らない世界を垣間見れるのは興味があるもの。かなり楽しめました。
人物の事を言えば、主人公窪島先生の黒を白と言えない性格、
患者の事を責任を持って考えてくれる優しい人柄に惚れ惚れしてしまいました。
そして内容的には登場人物全員が怪しい人間に思え、
なかなか犯人が分からず、最後まで緊張が続く作品でした。

連鎖 … 真保 裕一著 ■
第37回江戸川乱歩賞受賞作です。
チェルノブイリ原発事故によって
放射能汚染を受けた食品を取り巻くハードボイルド・ミステリー。
難しそうな話なのですが今の時期、
種類は違えども似たような事が起こったりしているので興味がありました。
この話、著者の取材力が素晴らしく、事件を究明していく過程で、
放射能汚染問題の知識が身につきます。
読みごたえたっぷりで、読んで損はない本だと思います。

ぼっけえ、きょうてえ … 岩井 志麻子著 ■
第6回日本ホラー小説大賞の作品と他3作です。
「ぼっけえ、きょうてえ」とは岡山地方の方言で
「とても、怖い」という意味だそうです。
装丁の綺麗な着物を着た女性は小説を読む前なら、
美しい女性だな…と思うのですが、
読んだ後見るとぞぞぞ〜!と背筋が凍るような恐ろしさを感じます。
読んでてショックを受ける話でもありますが、なかなか面白い作品だと思います。

予知夢 … 東野 圭吾著 ■
トリックで解明していく推理小説が5篇。
科学が、あまり好きではない私はちょっと苦手でした。
へぇ〜と感心したり、
ほぉ〜と納得したりはするんだけど、やっぱりダメです。
これは必死の思いで読みました。

東野さんのは全体的に面白いんだけどね…(^^ゞ

流星ワゴン … 重松 清著 ■
重松さんの本はどれを読んでも「愛」が感じられた。
作られた「愛」じゃなくて、
人間がそもそも持ち合わせて居る本質的な「愛」っていうのかな。

ストーリーをちょっと。
人生に疲れて死んじゃってもいいや…と思って、公園でまどろんでいると、
5年前に交通事故死をした親子が乗ったワゴン車に拾われる。
夢とも現実ともつかない思いの中、過去へと連れて行かれる。
そして見る小さい時からの親子関係、現実で最悪状態になっている家庭不和の発端。
それを知らされた上で、どう立ち直る事ができるか…。

切ない話でありながら、
それに負けずに立ち向かっていく主人公に心をうたれ、
最後の方に書かれている主人公から読者への投げかけというか頼み事というか…
これには涙してしまった。

この本は私のオススメだなぁ。